2010年10月アーカイブ

サクラソウの生育適地は、落葉樹林のなかでも春には確実に明るい場所のようです。


すでに述べたことですが、北海道のカシワの木は、春に葉を開くのが他の落葉樹に比べて目立って遅いのです。


春、葉を開いた途端に急に冷たい風が吹いて、せっかく開いた新しい葉が凍ってしまうというようなことを避けるため、遅霜の心配のない春たけなわの頃に葉を開く性質が進化したのでしょう。


そんなカシワの林は、主な活動時期を春にもつ小さな野草にとって、特に都合のよい生育場所です。


植物の活動に適した時期になっても上の木の葉が開かないので、明るく暖かい日だまりで十分に光合成をすることができるからです。


また、明るいうちに花を咲かせることは、昆虫に花粉を運んでもらうにも都合がいいでしょう。


サクラソウは、主な成長の時期や開花の時期が春なので春植物といってもよいですが、春が過ぎても積極的に葉を枯らし、葉の物質を地下部に回収するというようなことはありません。


適度に明るく湿った場所ならば夏まで、さらに秋まで葉をつけていることもあります。

ミズナラ林やカシワ林などの落葉樹の林では、季節による光の条件の変化が大きいです。


枝葉が茂る夏と葉を落としてしまう冬とでは、林のなかの光の量に大きな差があることは容易に想像がつきます。


もし、ある季節、林のなかのある地点において、植物が光合成に利用できる光がどのくらいあるかを知ろうと思ったら、ただその場所から空を見上げてみればいいでしょう。


枝や葉の影の間にのぞく空の面積、が大きければ大きいほど、そこは光が十分に注ぎ、光合成に都合のよい場所であるということができます。


下から見上げたときに葉や枝の隙間から空がたくさんみえるということは、そこには空全体から降り注ぐ散乱光がたくさん届くはずです。


また、太陽が枝葉の隙間から顔をのぞかせれば、直射日光が当たる可能性も大きいのです。


サクラソウが葉を開き花が咲き始める頃、まだ木々は葉を開いていないので、林のなかはかなり明るいです。


サクラソウが花を咲かせ続けているうちに樹木は葉を開き、林内は次第に暗くなっていきます。


サクラソウがよくみられる渓流沿いは、樹木がまばらなため、林のなかの他の場所に比べると春の遅い時期になってもやや明るいです。


同じ林のなかでも低木や他の草本の茂る場所では、春の半ばにすでに相当暗くなってしまいます。


そのような場所にはサクラソウはみられないのです。

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